40:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 18:10:50.74 ID:4sMggCAno
急に、胸が苦しくなった。
焦るような気持ちが体中を駆け巡り、耳元がざわついた。
喉の奥が熱くなった。
幸子は、自分があの村で何をやり残したのか、その未練の正体にようやく気が付いたのである。
それから幸子は閃いたように立ち上がり、もう一度事務所のプロデューサーに電話をかけた。
「何度もすみません……あの、スマホの写真をプリントアウトする方法って……はい……えっと、説明すると長いんですけど……」
「……え? 確かにそれなら……でもいいんですか? ……わ、分かりました、今から行きます!」
幸子はスマホを耳に当てたまま慌てて出かける準備をした。
そして家を出る直前、ふと思い付いて引き返し、まだ読みかけだった『銀の匙』を鞄に突っ込んだ。
あの夢のような日々、心躍るような思い出の残り香が、今また街の喧騒の中に洗い流されてしまわないように……
そして幸子は、一人の少女と一冊の本との出会いの思い出が、どうか楽しいものとして残りますように……切ないものとしてではなく、と願った。
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