9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:00:26.24 ID:+EtVRVLso
向日葵「今朝はごめんなさいね」
花子「いいしいいし。悪いのは全部櫻子なんだから」
櫻子「なんだとー!」
花子「ほんと、勉強は昔よりできるようになったかもしれないけど、中身は昔とそんなに変わってないし」
櫻子「小学生に言われた!」がーん
向日葵「まったくですわね。花子ちゃんが頼もしくなっていくスピードに、櫻子はついていけてませんわ」
花子「ふふっ……♪」
花子ちゃんは、今年で小学六年生。すっかり背も大きくなってきて、なんだかどんどん撫子さんに似てきたような気がする。
私と櫻子が離れた一年間、撫子さんのいなくなったこの家で、ずっと櫻子を支えてくれていたのが彼女だ。
目的を達成するまでこの私にも自分にも決して甘えないと誓った櫻子のそばに寄り添い、努力を褒め、道を違えそうになれば誰よりも厳しく叱っていたそうだ。気づけば撫子さんよりも櫻子をたしなめ慣れている。
冷たい麦茶の入ったポットとグラスを持ち、櫻子の後ろのソファにぽすっと腰掛けた。
花子「去年の夏休みも櫻子、よくここで勉強してたね」ちゃぽぽぽ
向日葵「あら、部屋じゃなくてここで?」
櫻子「ずっと部屋に閉じこもりっきりもよくないでしょ。宿題する花子と一緒にここでやってたの」
花子「櫻子にわからないところを教えてもらえるようになる時が来るなんて、信じられなかったし……」
櫻子「わははは! もうなんでもこーい!」
花子ちゃんの櫻子に対する目線が、いつの間にか変わっているような気がする。
それはまるで尊敬する撫子さんに向ける “憧れの目” のようで、しかしそれよりもどこか柔らかく、昔の櫻子を知るがゆえに成長を見守ってきた、親のような目。
花子ちゃんにとっての櫻子は、他に例を見ない不思議な立ち位置の “お姉さん” なのだろう。
昔からやたらと花子ちゃんに対してお姉さんぶりたい櫻子が「今年も宿題見てあげよっか〜?」と鼻を高くしていると、花子ちゃんは思い出したように言った。
花子「あ……そういえば、去年一回だけお友達を連れてきたんだっけ」
櫻子「えっ!?」どきっ
櫻子は突然目をぱちくりさせて驚いた。素っ頓狂な声がリビングに響く。
花子「来たでしょ? 花子、お茶を出した覚えがあるし」
向日葵「お友達?」
櫻子「ま、前の学校の子だよ! 女の子!」
向日葵「……そりゃ女子高に行ったんだから、女の子でしょうね」
櫻子「わ、私のクラスメイトだった子で……たまたま一緒にいるときにうちの前まで来たから、寄ってもらったんだよっ。花子よく覚えてたなー!」
花子「うん。今ひま姉が座ってるとこに座ってたの、思い出したから」
櫻子「っ……」
櫻子はシャープペンシルを片手に固まってしまった。問題集にまっすぐ視線を向けてはいるが、その目は焦点が合っていない。
どうやらその友達とやらの話を、私の前でされるのが困るらしい。
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