14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 01:31:31.30 ID:+EtVRVLso
向日葵「明日話すことを、今話せって言ってるわけじゃありませんわ。ただ何も話さなくなるのはおかしいですわよ。私にとっては、今のあなたにはいつも以上に喋ってほしいところなのに」
櫻子「え……?」
向日葵「せっかくあんなメッセージをくれたんですもの。恥ずかしがってほしくない。正面から向き合ってほしい。私、今まさにあなたのことが知りたくて仕方ないんですわ」
櫻子「…………」
向日葵「今こそいつも通りのさりげない会話がしたいのよ。今こそ。だって私は、あなたがここ最近どんな想いで過ごしていたか、まったく気づいてあげられなかったんですから」
向日葵「そういうところも、フェアに行きましょ?」
ずっと抱えていた自分の気持ちを、いきなり一方的に送りつけてきた櫻子。
私は櫻子にされるがままで、自分からは何もできない束縛感にもどかしさをおぼえていた。
こんなに大事なことなのに、一世一代の転換点なのに、櫻子は全部一人で済まそうとしている。主人公が自分だけだと思い込んでいる。そうじゃないはずだ。私の視点で見れば、私がこの物語の主人公なのだから。
櫻子はわざわざ事前に「予告」をしてきた。それはサプライズじゃ打ち明けられないほど大きなことで、どうしても勇気が出なかったから、自分で自分にリミットを課すことで「言わなきゃいけない状況」を作ったのだろう。
そうしてきてくれたのは、私にとってはありがたいことだった。幼いころからずっと一緒だった私たち二人の大事なシーンに、今更サプライズなんていらない。むしろそんなことはしてほしくない。
櫻子がそういう気持ちだったこと、私は本当に気づけなかった。これは私の落ち度と言ってもいい。こんなに一緒にいたのに、こんな手段に出るほど思いつめてくれていたのに、その高まる気持ちに気づいてあげられなかったのだから。
櫻子は今、ものすごく浮き足立っている。何日も何日もシミュレーションしたであろう日がもう目前に迫っている。今ならその気持ちが手に取るようにわかる。
だからこそ、私は何としても櫻子と同じステージまで上がらなければいけなかった。自分の気持ちを高めて高めて、万全の準備でその瞬間を迎えなければ。
向日葵「私は逃げませんわ。たとえどんな用事が舞い込んだとしても、明日の夕方6時に、必ずあなたを待ちます」
櫻子「…………」
向日葵「だから……どこにも行きませんから、その……いつもどおりで、いてくださいな」
櫻子「……う、うん」
櫻子を抱きしめる腕に、とくんとくんと心脈が伝わってくる。こんなに櫻子と密着したのは久しぶりだった。きっと私の胸も同じくらい高鳴ってしまっている。でも今はいい。私は櫻子と同じ気持ちになりたい。櫻子のことをもっとわかってあげたい。
櫻子「……わ、かった」
向日葵「…………」
櫻子「私も……決めたの。もう、逃げないって」
向日葵「そう……」
櫻子「だから……さ、向日葵……っ」
櫻子のうるんだ瞳が、私の目を見つめる。
胸の奥が一気にしめつけられるような気持ちになった。
櫻子のこんな顔は初めて見たかもしれない。一体何を言おうとしているのだろう。すべてがスローモーションになった気がした。私の目は櫻子の口元に釘づけだった。
櫻子「あの……その……///」
向日葵(っ……!)
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