荒木比奈「なぜ私がプロデューサーを避けるのか」
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26: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/09/01(金) 00:23:52.89 ID:2OqBKnfl0

◆◇◆

早足で私は自宅を目指す。彼の家を逃げるように飛び出してから、ずっと心が落ち着かない。

「どうしてあんなことを…」

自分の唇を指先でおさえながら、後悔する。あの本達を見つけたときよりも深い後悔。本の発見は、不慮の事故のようなものだけど、『アレ』は防ぎようのあったことだ。その事実がまた深く私の後悔に拍車をかける。

しかし私は愚かにも、さっきのことをちょくちょく思い出しては頬を綻ばせている。これも私の意志とは関係なく、勝手に私がやっていることで。さっきから思い出さないように心がけているものを、よせば良いのに何度も脳内で再生している。そしてまたにへらと笑って…

何をやっているんだ私は。多分、今が人生で一番自分で自分を信用出来ないときだ。

大丈夫だろうか。すれ違った人たちに変に思われてないだろうか。顔は赤くなっていないだろうか。

「…明日、どんな顔して会えばいいんスかね…」

自らまいた問題の種を思い悩ませながら、私は帰宅した。そのままベッドに直行して、体をベッドの上に投げる。

「はぁ…」

嬉しさと、後悔の混じったため息を零しながら、私は枕に顔を埋めた。眼鏡は先に外しておいたから、思う存分枕に顔を押しつけることが出来る。今日はもうこのまま寝てしまおうかとさえ思った。

でも明日になると顔を合わせないといけなくなって…

「うあ〜〜〜〜〜〜!うぅ〜〜〜!」

枕に顔を埋めたまま、うめいてしまった。本当に、明日どうしよう。


この日、墓場まで持っていくと、心に決めている秘密が増えてしまった。

その一、ペンネーム。

その二、原稿。

その三、今日のこと。


…でも三つ目だけは、いつか、ついうっかり彼に言ってしまいそうだ。それこそ、私がそうしようとは思っていなくても。

〜終わり〜




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