231:名無しNIPPER[saga]
2017/09/20(水) 23:32:38.40 ID:yNCJI72m0
「ひ、ひったくり!!!」
突然響いたその女性の声は、私の思考を現実に引き戻すには十分すぎるものだった。
ってか普通にビックリした! え? ひったくり? どこ?
……もしかして、前から猛然とダッシュしてくる人……!?
ど、どうしよう、どうしよう!
以前までの私だったら、そりゃタックルの一つでも決めてやるところだけど。
今はそんなことは、そんな良いことはできない。
でも、さっきのゆいゆいのパターンだったら? 良いことが良い結果になるなら?
いやいや確証がないよ。でもだってああ。
そんなことが頭を駆け巡る間に、犯人はこちらに一瞥もくれないまま、横を走り去って行った。
……罪悪感に潰されそうになる。で、でも、いつもの流れなら、これが良い結果につながるはずだし!
犯人の姿を再度捉えるために振り向くと、大柄な男性が、その犯人を取り押さえているところだった。
正直に言えば、安心した。これで犯人が逃げ延びちゃったら、私は一生後悔することになっただろう。
なんだ、やっぱり、悪いことをしたらいい結果になるじゃないか。
あの男性だって一瞬でヒーローだ。
そうだ、たとえ腕から血が流れていよう……と……
「……あ、え……?」
この距離でもわかる。あれは血だ。取り押さえている男性の腕から血が。
よく見ると傍にナイフが落ちている。犯人が持っていたのか。取り押さえる際に切られたのか。
どんどん増える野次馬に紛れるように、その場から去ることを、体が決断していた。
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