182: ◆nIlbTpWdJI[sage]
2017/09/18(月) 20:36:16.08 ID:HUNlZsa0o
……少しくらいなら、使ってもいいよね?
私の中から、ちくりと悪い声が聞こえてきました。
事務所には私だけ。
絵を描くのは私だけ。
なら、あの絵の具とスケッチブックは――
気が付けば、私はテーブルの前に腰かけていました。スケッチブックは目の前です。
私は、鞄の中からパレットと筆を取り出しました。
そしてスケッチブックに手を伸ばしました。
そのまま――ちょっといけないことをしてる気がしたけど――表紙を一枚だけ、めくってしまいました。
スケッチブックを開くと、誰もいないスキー場みたいに真っ白な画用紙が目の前に広がりました。
どこまでも広くて、ずっとずっと奥までどこまでも広がっているように思えました。
いてもたってもいられなくなって、大急ぎで筆洗を取り出し給湯室に飛び込んでいきました。
袖口が濡れることも気にしないで蛇口を思いっきり捻って水を溜めます。勢いよく跳ね返る水飛沫がシンクのあちこちに飛び散りました。
びしゃびしゃになったシンクをほったらかしにして私はすぐにスケッチブックの前へ戻りました。
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