5: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:09:14.61 ID:fLR/Lwcb0
「ううん、まだちょっと悩んどったんよ」
「でもまあ、うちも今年はええかな」
先輩はそばに据えられている車止めのポールに腰を預けて、難しい顔をした。
そうかと思えば、すぐに破顔する。
話してみると、彼女は存外よく笑う人だった。
「交通費も馬鹿にならんからね」
彼女が生まれ育ったのは福岡で、それは話す言葉の柔らかさからも窺える。
それから暫くああでもないこうでもないと言いながら、ついに帰省することを諦めたようだった。
「ようし、決まり」
人の気配の薄れた路地裏に、どこか近くのスナックから、カラオケの音がわびしく響いている。
彼女の背後から吹いてきた生温い風が、夏の匂いを運んでくる。
よくわからないけど、ああ、夏だなあと思えるような、どこか懐かしい匂いを。或いは気配のようなものを。
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