【デレマス時代劇】一ノ瀬志希「しあわせの白い粉」
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17:名無しNIPPER[sage]
2017/08/19(土) 08:15:46.78 ID:GVuX5Nn80
物証も証言も、いまのところない。
となれば、関係者の背景を洗うしかあるまい。
早苗は手空きの同心とともに、人別帳を調べることにした。
だが早苗が都に声をかけた時、相手は鼻で笑うような仕草をした。
とっくに調べがついていたらしい。
集落に出向いて以降、番所内で早苗に向けられる視線は、
あからさまに侮りを含んでいた。
意気揚々と同心達を連れて現場に出向いたが、成果はなし。
怒りに身を任せて、他人の家を壊す。
結果だけ見れば、早苗が行ったのは権力を用いた恫喝。
志希が怪しいのに間違いはないが、早苗は事を急ぎ過ぎたのである。
「一ノ瀬志希は、城に出入りしていた薬師の娘ですね」
「一ノ瀬って、あの?」
13年前、藩主の毒殺未遂が起こった。
そのとき関与が疑われた人間は、その大半が凍死している。
大した取り調べもないまま、冬の、野ざらしの牢の中に入れられたのだ。
早苗は駆け出しの頃に、その死体を目にした。
満足に食事も与えられず、
牢の中にはくるぶしが埋もるほどの雪が積もっていた。
早苗を含め、この不自然で残酷な仕打ちに対して疑問を持つ者は多く、
「氷獄の夜」という名で、未だに語り草になっている。
志希の両親は城に毒を持ち込んだとして、牢の中で氷漬けにされた。
志希は幼かった故刑を免れたものの、両親を失い、家を含む財産は方々から奪われ、
あの集落に打ち寄せられたのだという。
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