「藤原肇がそれを割る日」
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93:名無しNIPPER[saga]
2017/08/18(金) 00:47:08.45 ID:dZyp/T120
 誰もいない、ひんやりとした工房で、私はそれを手に持ち、しばらく立ち尽くしていました。

 放心状態と言っても、良かったかも知れません。


 焼く前から、窯元のご主人が懸念されていたことではありました。

 そこは厚みが他より少し薄く、耐力的にも脆い箇所です。

 しかし、厚くすればかえって重たくなり、バランスが悪くなって後ろに転がってしまいます。

 それより、元々不安定な形状であるため、焼き上がり後、冷ます間の収縮が不均一となってしまった可能性もあります。

 つまり――どうやったら防げたのかは、今の私には分かりません。


 窯元さんのせいではありません。単に、私のこだわりのせい。

 私の技量不足です。



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