9:名無しNIPPER[saga]
2017/08/18(金) 01:06:11.47 ID:bimQsMj20
田んぼ
俺は、苗を泥の中につっこむ作業を繰り返しながら、縁談相手を想像していた。
貴族様というのだから、煌びやかな衣装を着た優男なのだろうか。
それとも、太鼓腹を抱えた樽男か。
幼馴染様が、そのような輩に抱かれる姿を想像するだけで、頭に血が上った。
俺「果たして幼馴染様は、それでよいのだろうか」
もし、こう尋ねたら彼女は、きっと肯定も否定もしないだろう。
いつものように、黙ってほほえむだけだ。
俺は額にじんわりと浮かんだ汗もそのままに、空を見上げる。
中天にかかった太陽が、水田を干上がらせようと、どんどん熱気をおくりこんでいた。
首にかけたタオルで顔を拭いた俺は、ふと自分の姿をかえりみた。
古ぼけた麦わら帽子をかぶってはいるものの、黒炭のように灼けた顔はいかにも品がない。
手足はそれなりに太いものの、武術を習っているわけではないので、ただの丸太同然。
さらには腰を悪くした母と同棲していて、蓄えはほとんどない。
俺「これでは、貴族様にとられる以前の問題だ。幼馴染様は、どんなふうに俺を見ていたのだろう」
いまさら気づいた俺は、その場で立ちつくしてしまった。
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