50:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 03:47:28.45 ID:799lO0li0
俺「ええ、そうです。急に少女…さんが都会へ帰るというので付き添いで」
少女「無理してお願いしたんです」
婆「あらあら、それはたいへんですねえ」
爺「なんでえ、駆け落ちってやつだと思ったのによ」
俺「いや、それはありませんよ。大体俺には心にきめた相手が―――」
少女「…」ジッ
俺「…もしいたら、駆け落ちして、周りを不幸にすることはしません」
爺「女々しい考え方だな。日本男児ならもっと、自由に生きろよ」
婆「お父さんっ」
爺「あー、悪かったな。でも爺になるとああしておけばよかったって思うことはあるんだ」
爺はふてくされた様子で、そっぽを向いた。
婆「ごめんなさいねえ、気難しい人だから」
婆がとりなす一方で少女は、氷のごとく冷たい微笑みを顔に張り付けていた。
居づらくなった老夫婦がどこかへ席を変えてから、少女は、そっと耳打ちをする。
吐息は温かく、掌で口元を隠す仕草は艶めかしいのに、その牙からは毒液が滴っている。
少女「ねえ、俺さん」
俺「ん?」
少女「自由な人間なんて、どこにもいません。
私だって、満足に話せないような幼いときに学んだんです」
俺「…つまり」
少女「仲良く、旅をしましょう」
俺「分かっている」
少女は俺の知らない表情で、微笑んだ。
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