31:名無しNIPPER[saga]
2017/08/25(金) 03:14:01.62 ID:PY48O/Bg0
そのときの幼馴染様から,彼女は成長した.
村長様のもとで教養を身に付け,よりお淑やかに,より冷静に物事を言うようになったと思う.
だけど,彼女の中で村への愛と都会に対する不信は反比例的に加速していったのだろう.
事実,今の村には,自分以外の若い男はいない.
手に職をつけるためか,あるいは農家に嫌気がさしたためか,様々な理由があって,皆出て行った.現実は,噂となって拡散し,また凝縮されて現実となる.
かつての村の寄り合いでその話題がでると,きまって村長様は苦虫を噛み潰したような声で呻いていた.
村長様「弱いものは,なにをしても生きのこらなければならん.ここの田畑は痩せてきていて,蓄えも目減りしている.村長としての,儂にはたれも責められぬ」
隣に座っている幼馴染様は,何も言わなかった.ただ,人一倍村を大切に思う彼女が,無念さを蓄積させていたのだとしたら,今の彼女も頷けた.
彼女は突然,村を救うかもしれない手段を与えられて,動揺しているのだと思う.
そうして俺は,飛び込んできた彼女を掌の中で捕まえてしまった.
彼女の心臓の鼓動も,未来も,今だけは俺のものだ.
ここで彼女を優しく愛撫してやれば,簡単に靡くかもしれない.
だけど,俺にも十数年,想い続けてきたプライドがあって,それは今更変えられないものだ.
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