27:名無しNIPPER[saga]
2017/08/24(木) 04:33:44.93 ID:RcLzdRuW0
とある夏休みの入り口、最後の授業が終わった後、上級生、下級生全員が集まって遠足することになった。
寺子屋の後ろの丘に登って、みんなで弁当を食べる。
そんな日におきた、些細な不幸。
とある上級生がふと都会を眺めて、憧れていると告白した。
隣に座っていた友人が同調し、都会にある素晴らしい道具について噂する。
その周りで誰かが、驚く。
その周りで誰かが、見てみたいという。
誰かが、都会へ出たいという。
誰かが、冗談めかして、こんな田舎に残るもの好きはいないだろう、と笑う。
幼馴染様が、青ざめた唇を噛む。
誰かが、農作業の辛さを愚痴る。
幼馴染様が、目を伏せる。
誰かが、寺子屋が近い将来廃止されることを噂する。
幼馴染様の呼吸がいっそう粗くなり、瞳に涙がたまる。
俺は、叫んだ。
「でも、俺はこの村が好きだぞ!川釣りとか山菜狩りとか、蛙の丸焼きとか!」
皆が仰天して俺を見てから、お前はいつも食い気ばかりだと笑った。
しばらくして、幼馴染様は恐る恐る俺に近づき、尋ねた。
「…俺君にとっても、ここはいやなことの方が多いのでしょう?」
俺「そりゃそうさ。でも、あんまり言われて腹が立った」
「それなら、この村も本当は好きじゃないのですね」
俺「幼馴染様、意外と馬鹿だな。好きだって言ってるだろ」
「…好きと嫌いは相反する感情ですよ」
俺「お前の言っていることは分からないけど、俺はいやなことだって好きな理由のうちに入るんだ」
「どういうことですか?」
俺「つまり、今この瞬間は嫌なことが終わったから、好きなんだ」
「…夏休みに入ったから、ですね」
俺「おう」
幼馴染様は憑き物が落ちたように、声を上げて笑った。
幼馴染様「私、この村が好きです。だから、苦しんでました」
幼馴染様「今は、もっとこの村が好きです」
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