女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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名無しNIPPER
[saga]
2017/08/25(金) 18:47:32.70 ID:as1CpHWZ0
薄暗い取引現場。
危険物の取引など、並みの場所ではできない。このスラムという場所が見捨てられているからこそ、可能な芸当だ。ここでは誰も罰せられない。誰も救いに来ない。ここには法がない。
「ああ、じゃあ手筈通り頼む」
「了解」
羅門と男が話し込んでいた。漂う緊張感と、鋭い言葉の応酬。
本題自体はうまくいったようで、次の段階に進みそうだ。
僕らは小さく、少々の家具がある部屋に案内された。しばらくここで待ち、物を受け取り、それで終わりのようだ。
軽い食事を出される。コーヒーとパン。
卓也は食べ終わるやいなやトイレに行った。緊張とかで腹が痛い、みたいなことを言って。
僕は食事を終えた。羅門はゆっくりと食べていた。なんというか、見た目に反して紳士みたいな……なんというか。
気まずい雰囲気が流れる。「なぜ僕をそんなに嫌うのか」と聞いてみたい。だが、そんなことをしても変わるものはないもない。拗れるだけだ。
そして、羅門も食事を終えた。そのあとに祈りをささげるような仕草をした。
「どうした、珍しいか?」
彼をじっと見ていると、そんなことを聞かれた。
返答に困る。羅門は明らかに僕を嫌っている。下手に会話をしたくはない。
「そうですね」と僕は答えた。
「俺のところでは、これが普通だったんだよ」
「普通?」
「カミサマ、っていうのを信じるんだ。信じていれば救われる。そういう風に教育された」
……なんとなく、気づいたことがある。カミサマを信じれば救われる、という慣習は一般的には存在しない。そして『羅門はスラム出身だ』という言葉を思い出す。つまりは、スラム独特の考えだろうか。
そもそも、なぜいきなりこんなことを?
「……」
「だが信じていれば救われる、なんてありえない。所詮、空想みたいなものだ。現実的に、そうやって何かを縋っても何も解決しない」
「そうですね」
俺は、と羅門が言った。
「あまりお前のことが好きじゃない。何もかもが平気そうなお前が」
いきなり。そんなことを言った。
それは外見、個人の主観による意見。だが実際は、何かも、平気なわけじゃない。そう見えるというだけだ。
「人間味が無さすぎるようにも思えるんだ。割り切りがうますぎる。お前という人間は効率よく生きすぎている。お前自身にも腹が立つし、お前には関係のないことでも腹が立つんだ」
「じゃあどうしろと?」
「どうしようもないな」
「……そうですか」
本当に、どうしようもない。おまけに僕には関係のないことでも腹が立つらしい。
「お前は外と中の人間では価値観、物事を考える選択肢が違っている、と言ったな。確かにそれは事実だ。じゃあ誰が何をすればいい? ずっとこのままか?」
そんなことを羅門が問う。彼は僕のことを嫌いだと言った。だが彼は言う。いったいどうすればいい? お前はどう思うんだ? と。
試しているのかもしれない、と思う。だがそんな権利は羅門にはなかった。それどころか、ほかの誰にだってない。そういうことを、彼はしている。
「……バカみたいな理想論を抱いてるんですね」
「なんだと?」
「誰も、何もできない。わかりきったことでしょう」
……きっと、羅門は現状に不満を抱いているのだろう。スラムの人々に救いはこない。羅門にもそれがわかっていて、自分ではどうすることもできなくて……腹が立っている。そんなところで、僕がそれが当たり前だ、仕方ない、と言ったのだ。まあ、腹が立つのはわかる。わかるけれど。
「あなたの考えはなんとなくわかった、とても綺麗な思いだ。でも理想の押し付けはよくない。きっとその思いは正しいんですよ、でも」
「……」
「別に僕はあなたと争いたいわけじゃない。仲良くしましょう。そもそも、羅門さん。別に僕はスラムの人々がどうなってもいい、なんてことは思っていませんよ」
必要以上に誤解を受けている、気がしていた。
羅門は黙った。しばらく、何も言わなかった。
「悪かったな」
「……」
「自己嫌悪みたいなもんなんだ。――俺はスラム出身だ。自分では奴らを否定するくせに、他人に否定されると……なんともな」
わからない心境ではない。羅門はわりと正義感がつよい、気がする。……頭がそれほど良くないように思えるけど。
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