女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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67:名無しNIPPER[saga]
2017/08/23(水) 16:44:47.32 ID:gDsglEzi0
 
「お、裕樹クン。勉強熱心だね。君、ほとんどの時間、ここにいないかい?」
「気のせいじゃないですか?」

 確かに、僕はしょっちゅう図書室に来る。法の原点など、学ぶべきものが多いからだ。だが図書室に籠っている頻度は、卓也のほうがたぶん多い。過去の歴史の宝庫であるここは、彼にとってとても楽しい場所なのだそうだ。
 おそらく、照の勤務時間とかそこらへんが僕と被っていないのだろう。

「いやー、『図書館の後光、照』の名の返上は近いね」
「はあ」
「ところでなんだがボスがお呼びだ。ちょっと来てくれる?」
「ボスが?」

 ボス。このレジスタンスのボスは正直、そこまでかかわりたくない存在だ。恐ろしいとかではなく、力強さというか、気を緩めれないというか、そんな理由。
 あまり姿を見せない人だ。そんな人が僕に何の用だろう。
 僕は照の後についていく。

「最近どう?」
「普通です」
「そりゃよかった。そういえばさっきの『図書館の後光、照』の話なんだけどさ。この頭、禿げてるだろう? だから光を反射して図書室を照らすから名づけられたんだ。このつるつる頭が坊さんみたいだから後光、っていう寺っぽさを表現してるらしい」

 人の自虐ネタほど、反応に困るものはない。

 まもなくボスの下についた。大きめの削られた机に、椅子に座り、その人は待っていた。
 首の骨を鳴らしながら、ボスはこちらにニヤッと笑いかける。

「待ちくたびれたぞ。照、コーヒーを出せ」
「はいはい」
「小僧、お前は座れ」
「はい」

 照が湯気の立つコーヒーを運んでくる。ちゃっかり三つぶん持って来ていた。照は椅子を引きずり、ボスの近くに座った。
 僕はコーヒーに口をつける。……っと、物凄い苦みが舌を締め付けた。今すぐに吐き出したいぐらいの苦み。

「おっと、子供には苦すぎるか?」

 ボスがニヤッと笑う。顔に出ていたようだ。……まあ、それぐらい苦かった。普通じゃないくらいには。
 少し悔しくてもう一口コーヒーを喉に注ぎ込む。あまり量は減らなかった。ボスはそれを見てほくそ笑んだ。

「無理しなくていいぞ」
「……」

 今度こそ、コーヒーを流し込む。毒を飲んでいるような気分だ。だが顔には出さず、平然を保った。

「男気があるな」
「これぐらい誰でも飲めますよ」
「そうか。照、砂糖を持ってこい」
「はいはいはい」
「……」

 ボスは角砂糖を入れた、二つ分。普通、こういうのは一つしか入れない気がする。

「裕樹、とかいったか? よくこんな劇物そのまま飲めるな。普通の奴は無理だぞ」
「……は?」

 どういうことだ、と思うと照が声を堪えて笑っているのに気付いた。そもそも、照がコーヒーと同時に砂糖を持ってきていれば……つまりはわざとということだ。

「俺は、子供には苦すぎるか? と言ったが大人にとって苦すぎないとはいっていない」
「……」

 ボスはニヤニヤと笑っていた。

「あんまり警戒するな。余裕を持て。真面目すぎる奴はからかわれるぞ。こんな風に苦い経験を味わうことになる」
「そうですか」

 ボスは砂糖が十分溶けたのを確認し、コーヒーをうまそうに飲んだ。なんだかもやもやする。



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