女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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30:名無しNIPPER[sage]
2017/08/15(火) 22:27:44.82 ID:7t/DizBJ0
「やめなさい」
「迷惑はかけない。法に穴が開いているんだ。とれあえず、被害を被るのは彼女の家族と、実行する僕だ。父さんは大丈夫だから」
「そういうことじゃないんだ」
「無理っていうわけ?」

 この瞬間も、父は次の言葉を考えている。どうやって説き伏せるかを。なんとかして、僕を傷つけない言い方を。

「それもある」

 僕は目を瞑る。わかっていたことだ。

「だがな、それ以上にお前には危険な目にあってほしくないんだ。お前が雪ちゃんを助け出せて、命が無事な可能性がどんなに高かったとしても、父さんは感情的には……いってほしくない。理屈はまた別の話になるが」

 わかっている。わかっているんだ。父は息子のほうが大事なだけ。感謝こそすれど、恨むなんて筋違いだ。

 ……だけど、

「もう決めたんだよ。応援してほしいんだ」
「……無理だ」

 嘘を言うことのない誠実さ。いや、今、嘘をつくのは、最悪の事態を招くとでも思ったのかもしれない。

 沈黙が続く。夜の静寂が、逆に耳に突き刺さる。

 はあ、と心の中でため息をつく。気持ちが揺らぎすぎている。自分自身が嫌になる。身動きが取れない。息が苦しい。
 溺れている。もがいて苦しんで、答えを探している。

 いったいどうすればいいんだろう、と胸に問う。答えは、返ってこない――。

「なあ、裕樹」

 と、父が言った。

「なに」
「人は何のために生きるだと思う?意味はあるのか?きっとないんだろう」

 父は首を振る。僕は黙ってそれを見ている。



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