女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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29:名無しNIPPER[sage]
2017/08/15(火) 22:27:12.70 ID:7t/DizBJ0
――歯を食いしばった。
 誰も、何も悪くない。能力の欠如による失敗は社会では咎められる。結果がすべてだからだ。だがせめて、身近な人だけはそれを咎めないであげよう。だってそこにいる自分は最後の見方なんだから。
 だから、僕は耐えなければならない。それが正しいと、誰よりも、僕自身が信じているから。

「どうだっていいよ」
「諦められないのか?」

 まだ、続けるのか。

「……」
「時間が解決してくれるさ。というよりも、それしかないだろう」

 月並みな言葉。月並みな慰め。父はそれを繰り返す。別に父が悪いわけじゃない。でも……欲しい言葉は何一つくれない。それでも、誰かが悪いわけじゃない。
 向けられる感情は憐憫、そして愛情。思いやりの心。それだけだった。当たり前の、ことだった。

「……父さん」

 父は紛れもなく味方だった。だから、この悩みを聞いて欲しい。背中を押してほしい。
 いいんだろうか、と思う。結末はわかりきっている。父は僕を思うがゆえに僕を肯定しないだろう。切り出せば喧嘩別れになるかもしれない。

 ――恐怖に似た感情。

 もういいや、なあなあですまそう。逃げてしまえばいい。
 そんなこと思考が渦を巻く。だがそれは気持ち悪かった。逃げるということはしたくない。リスクを承知してでも、父を大切に思うからこそ、話さなければならない。

 ――そう決めてようやく、僕は父に言った。

「彼女を助けたい」

 父の顔は歪んだ。



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