女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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152:名無しNIPPER[saga]
2017/09/12(火) 18:43:24.17 ID:bdvuTYni0

「そんな大層なものではないけど、記号として僕は『賢者』と呼ばれているね」

 賢者の塔の伝説。星が堕ちて、人類は壊滅した。だが一部の人間は生き延びている。なぜだろう? それはきっと、誰かが先を見据えて人が生き残る手段を講じたからだ。ああ、未来を知る賢者様は我らを救いたもうた。

 おとぎ話にでも迷い込んだような感覚。現実感が麻痺していく。でも……つまりは彼が、都市を支配する裏の支配者、ということで……いいのか?

「どうして僕は、ここにいるんです?」
「いちおう、君の頭の中に答えは入ってるよ。でも突拍子もないから教えておくと……魂の成長と、魔素の適合のおかげかな」
 魂? 魔素の適合?
「最初に僕と会った時に唾をつけたおかげだよ。特別や偶然でもなく、必然でここに君はいる。僕はあの日の君の答えを気に入っているんだ」
「なにが……なんだか……」

 まるで、わからない。

「そんなことは重要じゃないんだ。大事なのは君がどういう選択をするか、ということだ」
「選択……?」
「ほら、わざわざ選択肢を表示するほど僕は優しくない。なにを思うか。なにをしたいか、そして僕に何をいうかを、君自身が選択するんだよ」

 ……選択。
 たったひとつの、当たり前に優先するべきことがあった。そしてそれは彼にどう思わせるだろうか。それすらも選択なのだろう。そういうことを、求められている。

「僕は彼女を助けたい」
「ふむ、いいんじゃないかな? それで?」

 彼は、目の前の賢者は部外者でしかない。僕がなにかをしたいと言った。だが、賢者は「それで?」と答えた。関係がないという立場であると、お前がなにをしようと勝手だと、そう意思を示した。

「力を借りたい」
「なんで僕がそんなことをする必要があるのかな?」

 そうだ。彼は関係がないのなら、メリットが、見返りがなければなにもしない。「助けてください」で助けてくれるほど、そもそも世界が甘くない。
 また、賭けだ。でも、やるしかない。根拠はいくつかある。それがどれぐらいあっているのかはわからない。希望を見たいからひねり出した願望でしかないのかもしれない。
 ……いいや、どれか一部は当たっている。その、自信がある。

「僕が……あなたに協力します」
「そんな価値が君にあるのかい?」
「わかりません。しかし、僕はあなたが彼女を助けるために協力をしないのなら僕はあなたの言うことを一切聞きません。なにもかも、絶対に」
 彼が僕を生かした。そして……彼は、僕に以前、都市の中で出会っている。そして、現にここにいる。
 結果論だ。結果論ではあるが……僕にはなにかしらの価値がある。そこは、間違いないはずだ。
 確証があるわけではない。他の可能性などいくらでもあり得る。しかし、僕自身に価値がなければ彼女を助けることはできない。価値がなくとも、僕だけは助かるのかもしれない。だからこれは……。
「ははは、考えてることがわかるよ。僕が言った言葉だ。さて、なんと言ったんだったかな?」
「……消去法的選択」




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