女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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134:名無しNIPPER[saga]
2017/09/10(日) 21:41:24.26 ID:02n9Gv6p0
 ◇


「仮説を立ててみた」

 二番が突然そう言った。卓也と僕は顔を見合わせる。

「どうしたんです?」
「なにかわかったんですか?」

「いや」と二番は言った。

 ただこうも言った。「死ぬ順番がわかった」と。

「魔力が低い奴から死んでるんだ。ただの予想だし、裏付けはない。俺の魔力が平均よりだいぶ高いからそう思っただけで、ほかのやつらの魔力の程度は知らないけど」
 ずっと考えていたんだ。どうして俺はまだ生きてるのかって。
「考えていたんだ。人が魔法を使えて、そしてなぜその力で都市を守れるのかって。きっと魔力が高くなって、魔素への親和度が高くなったとき、人は地上に戻れるんだ。完全な別種として生まれ変わってようやく、人類は元いた場所に帰る。……すまない、馬鹿なこと言った。忘れてくれ」

 二番は口をつぐむ。

「祐樹さん……」

 卓也が不安げな声をあげる。二番の予想が事実なら、卓也よりも僕が先に死ぬ。

「どうしようもないよ」
「でも……」
「僕らはやれることをやるだけだ」
「……」

 実際、その程度しかできないし、それ以外にやることもない。
 ごほ、とせき込む音がする。その主は二番で、彼は口から血を流していた。

「……ここで終わりみたいだな」

 ははは、と彼は笑う。それが虚空へ消えていく。

「いけよ。誰かはたどり着いてくれ」
「……必ず」

 誰かを見捨てること。それに慣れてしまったのかもしれない。悲しみは感じなかった。できもしないことを約束し、それでも進まなくてはならないという状況が、今の現実だった。
 前に進もうと一歩、踏み出す。少し迷って振り返る。

「あなたの魔力の数値を教えてください」

 死ぬ順番。



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