女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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129:名無しNIPPER[saga]
2017/09/09(土) 23:08:52.21 ID:43vqk7Yd0
結局、卓也も加えて六人で行動することになった。だからといって状況が好転したとはいえない。
 通常、こういったサバイバルのような状況で気になるのは食料だが、僕たちが心配するのは魔素による人体の影響だ。防護服である程度は防げるものの、その日にちはあまり長いとはいえない。
 あれから、半日たった。僕らは切れたワイヤーを眺め、呆然としていた。道しるべが、切れていた。

「……終わったな」と隊長は言う。もう片方の切れたワイヤーを探すため、周囲の捜索をすでに開始していた。だが成果はない。この激しい風のせいだ。あまり重量のない特別製のワイヤーははるか遠くに飛ばされたのだろう。どこに行ったのか見当がつかない。皆疲れ切った顔をしていた。このままでは生きては帰れない、そんな状況のせいで。

「やっぱり凶暴な生物がいたんだな」と二番が言う。

 ワイヤーにはなにかに噛み千切られたと思われる跡がついていた。それも、五本すべてのワイヤーに。
 珍しい物質だから、興味を持った何かがかみついたのだろうか? しかし、そんなことを考えたところでどうにもならない。
 一番がうめき声をあげる。

「どうしますか、隊長」
「……取れる手段は二つある」

 隊長は重々しく言った。皆が隊長の言うことに耳を傾ける。

「一つは、完全に散開してみんなばらばらのところに行くという方法だ。この手段なら誰か一人が帰れる可能性が高くなる。二つ目は……今まで通り広がって一方方向に進む。帰れる可能性は落ちるが、ある程度の方向は予想がついているからそこまで下策ともいえない。それにワイヤーを見逃す確率はさがる。ただ、その方向は完全に間違っている可能性もおおいにある、ということを考えるとわからなくなってくるが」

 隊長が皆を見渡す。

「選べ、誰もどっちを選んだかで文句は言わん」

 二番がゆっくり手を挙げる。

「隊長、ここで我々がとるぺきは一つ目の方法です。俺たちの命より、誰かが帰ることに意味がある。隊長も最初にそう言っていたはずです。……客観的に考えて、僅かだろうと誰か一人でも帰れる目算が高い手段をとるべきだと、俺は考えます」



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