女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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123:名無しNIPPER[saga]
2017/09/09(土) 23:04:41.56 ID:43vqk7Yd0



 進行は順調だった。危惧されていた危険生物との接触もなく、半日。生物はほとんど見かけなかった。見たのは最初に見たトカゲと、ムカデのような虫。きっとこれら以外にも生物の種類は生存しているはずだが、絶対数が少ないのか、遭遇できていない。
 見つけた生物にもあまり近寄らなかった。トカゲはどうせ逃げられるとわかっているし、あのトカゲの進化のことを考えると、防護服があるとはいえ、虫の毒やらも怖い。当然、地表の虫の解毒剤などないので接触は危険だった。
 足場は悪かった。延々と続く砂漠に凹凸のある地面。なかなか体力を消耗させられた。僕らは一時間ごとに二十分の休憩をとりながら進んだ。

 ……やはり、地表はどこかおかしい。真っすぐ進んでいるはずなのに、それができていなかったりする。ワイヤーが帰り道を指してくれてはいるが、不安になる状況だ。
 そして、見えてはいけないものが、見える気がする。

 怨念めいたものを感じる。ただの錯覚だろうか? プラシーボ効果? とにかく、ここは現実的ではない。
 焦る気持ちがこみあげてくる。僕に彼女を救えるか? やはり、無理だったのではないか?
 僕に見込みがあるからあの呪い師は近づいてきた、という薄い根拠。しかし、こんなものはあまりにも楽観的すぎる希望観測だ。もうこれしか僕にはとれる選択肢がないから、ただそれだけの理由で、僕はここにいる。

 ため息をつきたくなる。なにかしらがほしかった。だがなにごともなく、順調だった。

「待ってください」

 会話もつき、隊員たちに疲労が見え始めたころ、一番が言った。
 隊長が振り返る。

「どうした?」
「なにか……いえ、少し待ってください」

 僕らは止まった。一番は不安そうな、怯えているような、そんな表情をしている。



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