28: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:12:00.34 ID:F1z6JHSwo
そのお姉さんの話は、私の気を紛らわすとともに、また別の考えを私の中に残して行きました。
29: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:12:43.76 ID:F1z6JHSwo
参列の間、しおりは隣にはいてくれませんでした。
この奇妙な感情を共有してはくれませんでした。
30: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:13:12.14 ID:F1z6JHSwo
少し大人びて…いえ、ませていた、と言うべきでしょうか。
早熟な子だったと自分でも認識しています。
ですから、生きるとか死ぬとか言うことは、その頃にはもう何度も考えたことがあって。
31: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:13:40.18 ID:F1z6JHSwo
……なのに。
親族の葬式という、初めて人の死が身近になったその時、
32: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:14:13.06 ID:F1z6JHSwo
どこかで気づいていたのです。
私にだけ見える『しおり』は、この世界に生きている存在ではない、と言うこと。
私の隣にだけいる、誰も知らない友達。
33: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:14:41.52 ID:F1z6JHSwo
本当は、わかっていたのです。
生きている私と、生きてはいないしおりとは、一緒にいてはいけないということを。
34: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:15:11.22 ID:F1z6JHSwo
『しおり』。
塩・潮・汐、……「波の花」。
35: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:16:05.80 ID:F1z6JHSwo
私にはしおりが必要でした。
けれど、私が呼ぶその名が彼女と海とを結んでいる。
36: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:16:43.60 ID:F1z6JHSwo
それなら。
名前を、つけましょう。
37: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:17:10.11 ID:F1z6JHSwo
あの日、貝殻と一緒にしおりが私のもとを訪れたことを思い出して。
38: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:17:39.29 ID:F1z6JHSwo
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夢を、見ない日が続きました。
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