39: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:18:07.36 ID:F1z6JHSwo
貝殻を依り代にして、私の中に、……いえ、私の隣につくった女の子は、これまでの『しおり』とは違って、
明確に一つの、一人の女の子でした。
40: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:18:37.15 ID:F1z6JHSwo
彼女を作ってからも、彼女に与える名前はなかなか決まりませんでした。
辞書を引いて、いくつもの漢字を日記の隅に書き連ねて。消して。
41: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:19:28.98 ID:F1z6JHSwo
その時知った「栞」という字、それはきっと今までの『しおり』に与えるべきだった名前で。
そして、「枝折」という字。
42: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:21:13.60 ID:F1z6JHSwo
同じように、可愛らしくない字、不吉な字、しっくりとこない字は頭の隅へと追いやって行きました。
死・肢・檻・汚・尾・離・裏。
43: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:22:21.91 ID:F1z6JHSwo
彼女とは色々な話をしました。
これまでの『しおり』とは違って、彼女は私の話をただただ聴いてくれるだけではなくて、
色々な事を答えてくれたのでした。
44: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:22:50.90 ID:F1z6JHSwo
……きっと、これだ。
たくさん書き集めた漢字の中から二文字を拾い上げ、彼女を『詩織』と呼ぼうと決めました。
45: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:23:18.83 ID:F1z6JHSwo
その名前はとてもよく響いて、彼女を地に足のついたたった一人の友達として、完成させてくれたようにすら思えました。
不思議なことでした。そして、とても嬉しいことでした。
46: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:23:48.95 ID:F1z6JHSwo
二人でいる時間はとても楽しくて、少し頭がぼうっとして……
本当に素敵な時間でした。
四六時中、彼女と一緒にいました。
47: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:24:21.70 ID:F1z6JHSwo
―――
48: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:24:48.94 ID:F1z6JHSwo
―――
その冬、私は大熱を出しました。
49: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:25:30.14 ID:F1z6JHSwo
どこか遠く、向こう側から、詩織が私に手を伸ばしていました。
ああ、行かなくちゃ。
どうにかそこへ向かおうと。
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