渋谷凛「輝くということ」
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12: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2017/08/10(木) 00:08:49.73 ID:c5e7bYk30



ダイニングテーブルには三人分のパスタと大皿に盛りつけられたサラダが並んでいた。

私と母が席に着いて、少しした後にお父さんが店の方からやってきた。

「おー、今日はパスタかー」

「ちゃんと内線の子機出してきた?」

「もちろん」

「じゃあ、食べよっか」

そんなやり取りを経て、三人揃って「いただきます」をした。

母と父の談笑を聞きながら、フォークでくるくるとパスタを巻いて、口に運ぶ。

うちの親は本当に仲がいいなぁ、なんて思いながら口と皿の間をフォークは何度も往復し、やがてお皿の上のパスタはなくなっていた。

両手を合わせて「ごちそうさまでした」と言って、食べ終えた食器をキッチンへと持っていこうと立ち上がる。

「そういえば今日の散歩は長かったな」

サラダをもぐもぐとしながら父がそう言った。

それに対して、私は「うん。ちょっとね」と返す。

母は「飲みこんでから喋りなさい」と父を注意した後で「何かあったの?」と私に尋ねた。

「んー……実はね」

下手に隠して心配させるよりはいいか、と今日の散歩中にあったことを一つずつ話し始める。

いつもの公園に行ったこと。

誰もいなかったからリードを外したこと。

ハナコが逃げて行ってしまったこと。

捕まえてくれた人がいたこと。

その人が芸能プロダクションのプロデューサーだったこと。

そして、アイドルにスカウトされたこと。

全部包み隠さず話すと、母は「もうハナコから目を離しちゃダメよ」とだけ言った。

父は何も言わなかった。

沈黙を破ったのは、来客を知らせる内線だった。

内線の呼び出しを聞くや否や、父はがたっと立ち上がって店の方へ小走りで向かって行った。

「洗い物、私がやるよ」

ダイニングテーブルに残された父の分の空っぽのお皿を下げて、キッチンへと持っていこうとしたところ母は首を振った。

「ちょっと座って?」

「いいけど……何?」

「アイドル、どうするつもり?」

「やるつもりは……今のところないかな。特に興味もないし」

「なぁんだ。娘がアイドルになるかと思ってちょっとわくわくしてたのに」

なんて冗談めかし、くすくす笑いながら母は席を立つ。

「悪いんだけど、洗い物頼んじゃってもいいかしら?」

「うん」

「よろしくね。お母さんは洗濯物やっちゃうわ」

「わかった」

「それとね、これは明日から高校生になる凛にお母さんからのアドバイス」

そう言って改めて私の方へと向き直り、母はにっこり笑う。

「たくさんのことに全力で挑戦してみなさい。お母さんは凛がどんな選択をしても応援するから」



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