114: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2017/08/10(木) 01:01:16.84 ID:c5e7bYk30
*
車に乗り込んですぐ、彼は私の方を向いて、襟を正す。
何度か深呼吸のあと意を決したようで、口を開いた。
「……凛の夢、俺に叶えさせて欲しい」
「どっちを?」
「どっちも」
時が止まった気がした。
本当にそれでいいのだろうか。
彼から、プロデューサーという仕事を、これ以上ないくらいの天職を、奪ってしまっていいのだろうか。
「……気持ちは嬉しい。でも、片方だけでいいよ」
「一緒に花屋をやるのは嫌?」
「嫌じゃない。嬉しいよ。けどさ、今の仕事、好きでしょ?」
「ああ、うん。それは……そうだね」
「ほら。だからさ、そういう無理はしなくていいよ」
「無理じゃないよ。確かに今の仕事は好きだけど、それ以上に、凛の隣にいたい……なんてちょっとクサいかな」
あー、もう。
ほんとに、ばかみたい。
「……じゃあ、よろしくお願いします」
絞り出した返事は情けないものだった。
「ちゃんと筋は通さなきゃいけないから、すぐに辞めるってわけにはいかないけどさ」
「大丈夫。待ってるよ」
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