460: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/10/23(月) 21:34:07.29 ID:wQDSgDey0
よく、ドイツ語は演説向きの言語だって話を耳にする。何でも勇壮な響きの単語が多くアクセントも相手を「のせ」やすいため、大衆を高揚させ煽動する際に大きな助けとなるらしい。
まぁ、政治家なんていう七面倒な職につく予定もなければハーケンクロイツを掲げてミュンヘン辺りで崇高な使命を胸に抱いて決起する情熱も持ち合わせていなかった俺にとっては、はっきり言ってどうでもいい話だ。
………どうでもいい話、だったのだが。
(#゚д゚ )「─────Achtung!!!」
('A`)「…………コッチミンナ」
今俺は、1000人強の武装した兵士達の前でそんなドイツ語の特徴を最大限に生かす必要性に直面している。ミルナ中尉の(無駄に)良く通る声で全員が一斉に直立不動となり、心ない部下達によって壇上に追いやられた憐れな痩せぎすの陸軍少尉へと視線を集中させる。
あの大侵攻によって最前線都市に様変わりしたドレスデンは、今では東欧連合軍にとって重要な軍事拠点の一つだ。住民は悉く強制的に疎開させられ、元から済んでいた奴等は誰一人残っていない。変わって今街の中に居るのは、俺達ドイツ連邦軍を含む【東欧連合】に参加した国から派遣された軍人達。
今俺の後ろにある元ショッピングモールも、今や立派な軍事施設に様変わりだ。広場には兵士と整備済のPT-91【トファルディ】並びにレオパルト2、それに大小様々なタイプの輸送ヘリや戦闘ヘリが家族連れの代わりに雁首を揃え、屋上には即席の対空機銃座が晴れ渡った空ににらみを利かせている。
別段俺にとっての故郷だったり、或いは初恋の相手とのロマンスとかがあった思い出の地だったりというわけではない。それでも、ごく普通の営みが築かれていたはずの街が戦場になる事への哀愁を禁じ得ず────
( <●><●>)「少尉、貴方が街の光景に思いを馳せ憂うフリをしてこの場をうやむやにしようと思っているのは解ってます」
('A`)「ナンノコトデスカナ」
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