353: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/10/06(金) 09:26:56.39 ID:Q97Eht8ZO
『アンム、アンム、アンム………』
人一人を丸呑みにするため2m四方まで脹れあがった赤ん坊の───深海棲艦の頭部は、口の中でしばらく獲物をもごもごと遊ばせた後に大きく喉を鳴らして嚥下した。口の端からはみ出ていた腕が噛み千切られてこぼれ落ち、水溜まりに音を立てて落下する。
『キュヒィイイイイ………』
頭部の肥大化は例えば、ナマズが餌を食うために大口を開けたような一時的なものではないらしい。ゲップと思わしき生臭い息を吐いた奴の頭部は一向に縮まる気配がなく、それどころか胴体も間を置かず頭部に続いて膨張を開始した。
『ギッ、ギギギィッッッッ…………』
人間には「成長痛」なんてものがあるが、深海棲艦にも共通するのだろうか。既に“赤ん坊”からほど遠い存在に変貌しているその生物は、胴が変態しだすと同時に激痛を堪えるかのごとく食いしばった顎の隙間から歯ぎしりのような摩擦音を漏らす。
『グッ………アァアアッ!!!!』
それは“成長”であり、“退化”でもあった。
丸太のように図太くなった胴体は、残っていた寄生主の下半身を押し潰してズンッと床を揺らす。そこに先程まで生えていた手足はなく、俺達のライトを反射してヌラヌラと不気味な光沢を放つ青白い皮膚が存在するだけだ。
ビシャリ、ビシャリ。
目の前の生物がのたうつ度に、水音がして磯臭い液体が壁や俺達の身体にかかる。元よりあった分より明らかに嵩が増したそれを見て、俺はようやく廊下に撒き散らされていたそれらが“そいつ”の身体から分泌されているのだと理解した。
『─────ォギァアアアアアアアッ!!!!!』
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