ある門番たちの日常のようです
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281: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/09/20(水) 20:35:56.44 ID:zaZUfR/t0
( T)「杉浦六真は常に先を見据えて、二手三手どころじゃなく一仕事が“終わった後”やら“その次の仕事”のことまで考えながら動く。俺含め脊髄で目の前の敵ぶっ倒してるだけの下っ端組なんかとは比べものにならないぐらい広い視野で判断を下す人間だ。

でもな、その“視野”から見える景色はお前にしか解らねえんだよ」

我が輩の肩に、奴の左手がぽんっと軽く置かれる。

火傷の跡だらけの、酷くゴツゴツした一握りの岩のような手だった。

( T)「将棋と同じだ。プロ棋士にとっちゃ何十手も先を見据えて打った効果的な手でも、ド素人や初心者には解説されない限りその意図は解らない。独りよがりにお前にとっての最善手を打ち続けても、理解できないなら誰もついて行きようがない。

何もかも噛み砕いて教えてくれとは言わんが、せめて大まかな脳内ぐらい共有しろ。下手したらお前自身も気づかない内に道踏み外すぞ────あぁ、もう一つおまけで付け加えるけどな」

(メメФωФ)「………っ」

囁き声が、低く唸る猛獣のような調子に変貌した。

肩の骨が、軋む。僅かに奴の手に力がこもり、爪が、指が、肉に食い込み血管を圧迫する。神経が擦れるような痛みを脳が感知し、咄嗟に歯を食いしばって最後の意地で痛みの声を上げることだけは避ける。

( T)「今し方俺は“知り合い”としての義理は果たしたから、お前がこの後どんな選択をしようが口は挟まない。アドバイスを無視するなり弁えるなりお前に任せる。

───だけど、どんな理由があっても。どんな言い訳を並べ立てても」

肩を掴んでいた左手が離れ、直後に一閃される。

一陣の風が吹き、我が輩の右頬に新たな傷が薄らと口を開く。

青葉に勝るとも劣らない速度の、手刀だった。

( T)「さっきみたいな表情で弾かれた算盤の珠に、もしウチの鎮守府の奴等が含まれたら────俺は間違いなくお前をムカデ人間より酷い目に遭わせる。それだけは覚えておけ」

(メメФωФ)「……怖いと言えば怖いが、どうにもしまらんなその脅しは」

言うだけのことを言って踵を返したデカイ背中に向かって、我が輩はそういって肩を竦めて見せる。

冷汗は出ず、代わりに真新しい傷口から赤い血の筋が頬を伝わり落ちていく。


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