259: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/09/10(日) 23:39:47.19 ID:ei6k8IN/0
よく勘違いされがちだが、第二次世界大戦期に量産された大口径の対空砲────所謂「高射砲」、或いは「高角砲」と呼ばれる類いの兵器は航空機へ直撃させることを目的には設計されていない。あれらの砲が期待されたのは爆発時に撒き散らされる破片で敵機に損傷を与えて飛行を阻害することであり、言ってしまえば対空の榴弾。直撃撃墜の例もある程度存在はするが、全体から見ればやはり少数派となる。
確かに命中した場合“スーパーフォートレス”と謳われたB-29すら粉砕するほどの威力であったが、どんなに遅いものでも時速数百キロ前後で高高度を飛行する機体に狙って砲弾をぶち当てろなどどだい無理な話だ。ましてや爆撃機や雷撃機を遙かに上回る旋回性能で飛び交う戦闘機を“狙って”撃墜するなど、本来なら夢物語に他ならない。
故に、我が輩は興味がある。
『『『─────!!!?』』』
ランダムに散開飛行する【Ball】の機影が同一射線上にたまたま重なった一瞬を“狙って”放たれたたった一発の砲弾によって、内半数が撃墜された艦載機共の母艦の心境に。
「───第2射行くよ!地上部隊、衝撃と墜落機に注意!!」
青葉型重巡洋艦2番艦・衣笠。所謂【改ニ】改装を完了している彼女の左手に装備される艤装は、“海軍”技研が(あの間抜け極まりない刻印が為された手榴弾と共に)開発した最新鋭装備である20.3cm連装砲の3号型。
史実においても高射砲としての役割を兼任できるように最大仰角を通常型から大幅に上げられた経緯があり、技研の話に寄れば実際従来の20.3cm砲と比較して実に25%の対空能力向上を果たしたという。
「そぉ〜〜〜れいっ!!!」
まぁ我が輩が記憶する限り、マッドサイエンティストの集まりである技研もこの新型砲の弾を“敵の戦闘機に狙って直撃させる”使い方は説明していなかったと思うが。
『『『!!!?!?!?』』』
衣笠改ニの砲撃が再び空を駆ける。統率する母艦が混乱していたらしい【Ball】は、愚かにも丁度残余機隊が衣笠へ攻撃を掛けるべく空中での集結を完了していた。
「ストライクってね!!いや、二回撃ったしスペアかな?」
たった二発の砲撃で、我が輩たちの頭上から敵の機影が消え去った。
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