164: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/08/31(木) 01:01:47.49 ID:PIXFVoZp0
最も射程が短い駆逐艦の主砲でも18km前後の距離から撃ち合うことが前提であり、“軍艦”という兵器は基本的に「いかに遠距離から敵を撃てるか」がコンセプトだ。
生ける軍艦である艦娘も、そして深海棲艦も同じことだ。彼女達は──前者に関しては“海軍”に所属する子を除いて──真っ向からの白兵戦闘なんて想定していない。非ヒト型はおろか、ヒト型ですら“人間の武器”には効果的でも“人間それ自体”の透過は防げずにいる。
艦娘の戦闘面での練度・質は圧倒的で制約も少ない“海軍”は、ただ国際的な組織でありながら保有する艦娘の数も相応に少なかった。艦娘には遠く及ばないにしろ深海棲艦にダメージを与えることが可能な戦車や戦闘機といった兵器も、組織の特性上おおっぴらに買い揃えるわけにもいかない。
そのため大本営────私達の上層部が目を付けたのが、“とある場所”で歴史的な戦果を挙げたこの白兵戦術だった。
目には目を、歯には歯を。特に甲殻それ自体が戦艦の装甲的な役割となるためまともな金属では貫けない非ヒト型にダメージを通すため、採取された奴等の甲殻片を加工して造られた剣や槍、クロスボウなどが艦娘・人間を問わず配られた。
戦車を複数台纏めて粉砕できるレベルの砲火と音速の戦闘機も撃墜できる機銃掃射の中を突っ切り、敵に肉薄して斬りつける───時代錯誤も甚だしい、長篠に散った武田軍も真っ青な戦い方。
でもこの戦い方こそが、私達“海軍”の最大の武器でもあり深海棲艦たちに対する隠し球でもある。
そして“隠し球”は、今回もまた深海棲艦たちに大きな混乱を与えることに成功していた。
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