5: ◆ULqTtBUL.k[saga]
2017/07/23(日) 02:27:50.82 ID:jWGgUzWko
そう言いながら、楓さんの顔が近づいてくる。
心なしか、いつもより赤味を帯びているように思えた。
それがアルコールのせいなのか、はたまた別の理由からか。
もはやそれを考えるほどの余裕は残されていない。
あたふたと落ち着かない自分をよそに、彼女はそのまま身を乗り出してくる。
食器がぶつかる音。机が軋む音。衣擦れ。お互いの吐息。
店内は騒がしいはずなのに、聞こえてくるのはそんな音だけだった。
「個室で良かった」なんて場違いなことを考えていると、彼女が言葉を続けていく。
「『好き』と、そう自分の口で伝えてくれませんか?」
決して近くはないのに、その呟きは耳元で囁かれたみたいに頭の中をかき回した。
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