44:名無しNIPPER[saga]
2017/07/21(金) 19:28:40.80 ID:+NyjqKO10
『絵里へ
最近、あの日のことを、そしてあの「木漏れ日の中」の光景を思い返すたび、頭痛がひどくなります。
きっと、核心に近づいているのでしょう。
私が忘れているもの、忘れている人。
手紙を書いている今も、すぐそこにあるような、もうすぐ思い出せそうな気がしています。
カメラの操作方法を教えてくれたのが凛だと言う話は、納得できます。
あの娘は普段は私に怒られているくせに、私が困っている時はすぐに近寄ってきますからね。
ただ、私と凛が「プレゼントにぴったりな場所」を見つけたという話は、残念ながらピンと来ませんでした。
午前の休憩の時、カメラを持って四苦八苦していたところから、一向に記憶が戻らないのです。
代わりに、夕方の休憩のことは、だんだんと思い返してきています。
私は誰かを「木漏れ日の中」に誘いました。
絵里が調べてくれた通り、プレゼントを渡そうとしたのです。
おそらく私は、あの場所が彼女にぴったりだと思っていました。
外は暑いはずなのに、あそこだけが涼し気で、日の光を遮る葉と、楽し気に地面で踊る影と……。
柔らかで寄り添うような光を、この上なく、彼女らしいと思っていました。
プレゼントとは、何だったのでしょうか。
私が渡そうとしたプレゼント。
何となく、わかるような気がします。
再三手紙にも書いた、空色の勿忘草の栞。
貰い物だと思っていました。ですが、ひょっとしたら、この栞は渡せなかった物なのかもしれません。
大空を思わせる花の色が、ことりに
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