ことり「前略 木漏れ日の貴女へ」
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11:名無しNIPPER[saga]
2017/07/21(金) 18:56:06.78 ID:+NyjqKO10


      *


『園田海未様


 返事が遅くなってごめんなさい。実は私、日本に帰って来たのよ。

 向こうの学校は一年間の休学扱いにしてもらったの。そのゴタゴタでしばらく手紙を出せなくて。


 貴女の言いたいことはわかったわ。
 
 でも、一度に全部を教えてあげることはできないの。刺激が強すぎる、ですって。

 貴女が自分で思い出せるように、貴女の質問に答える形で少しずつ進めていくわね。

 きっとその方がいいわ。貴女しか知らないことだってあるはずだし。

 大丈夫よ。音ノ木坂の誇る最後の卒業生、それも未来の名医の言うことだもの。

 
 さて本題だけど、貴女の記憶はほとんど正しいわ。でも、少しだけ違うところがあるわね。

 まず、山に登ったのは本当。夏の終わり、夏休み最後の日、8月31日。

 ちょうど、貴女が最初の手紙を書いた日ね。

 言い出したのは海未だった。山登りと言えば海未よね。

 今だから言えるけれど、私たちはあんまり乗り気ではなかったのよ?

 まあ、それはもうどうでもいいわよね。


 麓まではバスで行って、そこから少し歩いて登り始めたわ。

 ハイキング程度と聞いていたのに、想像したよりきつくて驚いたわ。山登りって大変なのね。 

 貴女が先頭を歩いていたのは本当。でも、穂乃果と2人ではなかったはずよ。きっと、3人だったはず。

 よく見ていたわけではないけれど、会話が少し変だもの。


 まず、『――「お水なくなった」』

 これは穂乃果らしい一言ね。あの日、穂乃果は早々に自分の水を飲んでしまっていたから。

 でも、『――「ぷはあ! 生き返ったあ!」』

 これはおかしいわ。だって穂乃果は水を持っていないのよ。

 海未はたまにぼうっとしているけれど、カバンの中の水筒を取られたらさすがに気づくでしょ?

 穂乃果は誰から水をもらったのかしら。



 10月 12日

 絵里より』



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