22:名無しNIPPER[saga]
2017/07/21(金) 20:51:20.38 ID:9t2ZJ9VMo
「すいません、少し窓を開けてもらってもいいですか?」
「ええ、いいですよ」
中田靖に言われたとおり、話ができる程度に窓を開けた。
「殺さないでください……。昔はこんなに可愛いかったんです」
空いた隙間から、写真を差し込んできた。
内容を見ていないのでどんな写真であるか想像がつかないが、幼少期時代の写真だろう。
「きっと私のせいなんです……。
私がシングルマザーだから、大地の事よく見てあげられなくて、それで歪んでしまったんです……。
だから私の責任なんです……。
だから私を殺してください。
あの子にはまだ未来があります……
だから……許してやってくれませんか……」
「言い訳しないでください。私だって男手ひとつで博を育てました。
本当に博はいい子でしたよ……。私がどんなに遅くに返っても出迎えてくれた。家事を手伝ってくれた……。
忙しくて、休日にどこにも行けなくても何一つ文句言わなかった。本当にいい子だったんです……」
中田靖の目尻から涙が零れた。
中田靖はこちらを向いて車を発進して欲しいと言ったので、それに従って車を発進させた。
サイドミラーから後ろを見ると、中村大地の母親は必死な顔で何か訴えていたが、周囲の雑音にかき消されて聞こえなかった。
「度々すいません。少し用意して欲しいものがあるんです」
「ええ、いいですよ。何でも仰って下さい」
私は中田靖を中村大地の居る部屋に入れてから、中田靖に指定されたものを準備することにした。
中田靖がそれを用意するように言ったのは、きっと彼なりの優しさなのだろうと私は思う。
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