47:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:37:47.06 ID:+eTeNEs7O
9.
話は拍子抜けするほどに手早く進んだ。あの相談を受けた夜から二週間と経たないうちに、彼女が去る日が訪れた。
三年には届かない。けれど、短くはない時間を共に過ごした。そんな仲間が辞めてしまう日、同僚たちは皆現場に集まった。この日にはなんの招集もかけていない。自発的なものだった。
時は真昼。工事現場で、重機があって、作業員がたくさん集まっているのに、そこにやかましい音はない。不思議な光景だ。
自分たちと対面するように、彼女は立っていた。
その構図はお互いの間に明確な線があるようで、それが寂しさを呼ぶ。ほんの少し前までは、彼女もこちら側にいたのに。
「……みんな、ホントのホントに、お世話になりましたっ!」
言って、彼女は大きく頭を下げた。
誰からともなく、返事をかえす。
お疲れ様。またな。元気で。…………さようなら。
どの言葉が触れたのだろう。頭を上げた彼女の表情は、酷く歪んでいた。
お別れ、なんだよね、みんなと。
ポツリと落ちた彼女の声。
荒れていく。
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