19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:45:36.76 ID:+eTeNEs7O
彼女の出身もこのあたりだったはずだ。
毎年行われるそれを見飽きたりしないのか、と尋ねた。
「んー、まぁ毎年だいたいおんなじだけど、アタシ的には見ときたいかなー。これ系のイベントってさ、いつ終わっちゃうかとかわかんないらしいし。来年はもーしません、とかもありえってぃかもじゃん?」
20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:46:35.36 ID:+eTeNEs7O
始まったらしい。時間はちょうど七時半だった。
一瞬のフラッシュと、轟きの連続、感嘆の声。
これをもう二度と感じられなくなるなら。
そう考えても、ならばと観る気はさほど起きなかった。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:47:07.43 ID:+eTeNEs7O
ついでに自分の頼むものも買ってきてほしい。そっちの会計もこちらで持つから、と伝えた。
「太っ腹だな。まあ全然行くけど、ちょっと遅くなるスよ?」
やむを得ないだろう。
22:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:48:14.16 ID:+eTeNEs7O
せめてもの、という気持ちで、このあと予定のない人を募った。見事に全員が手をあげたのが哀愁を誘う。人のことはもちろん言えない。
「なに、メシでも奢ってくれんスか?」
そのつもりだ、と返し、買い出しを頼んだ彼を呼んだ。
23:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:49:03.52 ID:+eTeNEs7O
*
「うめえ」
24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:49:51.02 ID:+eTeNEs7O
*
「おらァ! 独眼竜ぜよ!」
25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:50:21.91 ID:+eTeNEs7O
少し離れた位置で眺めていると、彼女がまだ未開封の花火セットを持って駆け寄ってきた。
「おーやかた! 親方も一緒にやろーよ!」
彼女の向こう側には戦争のような光景が見える。もうヤケドもなかなか治らない歳なのだが。
26:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:52:58.57 ID:+eTeNEs7O
6.
彼女というムードメーカーが入社し、職場の雰囲気は確実に良くなった。
男というのはなんとも単純だ。彼女の手前、良いところを見せたいのか以前よりもやる気を出すようになった。
また、彼女を通した新しい繋がりも生まれ、コミュニケーションも活発になった。
27:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:54:24.56 ID:+eTeNEs7O
上述の通り彼女の存在は他の作業員のモチベーションになっているし、彼女自身も勤続一周年が近づいて仕事をある程度任せられるようになっている。
抜けられるのは痛手だ。
そして、純粋に嫌だな、と思った。
28:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:55:04.84 ID:+eTeNEs7O
夕闇どきに作業を終え、帰っていく朝からの勤務だった面子を見送った。夜勤のために来た社員に引き継ぎを済ませて簡単な指示を残す。
プレハブからバッグを持って出ると、彼女は引き戸の横の壁にもたれ掛かりながら山あいに沈みかけの太陽を眺めていた。
黄昏の柔らかなオレンジが、揺れる金髪に照り返っていた。幻想的だった。
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