38:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 21:44:41.91 ID:NlBQtPKPo
掌に柔らかな感触と、熱を感じる。
気づけば俺の掌はイヴの両の掌に包まれていた。
金の瞳から慈愛に満ちた眼差しが俺に真っ直ぐに注がれている。
イヴのその口元は薄っすらと笑みの形を浮かべている。
この表情を、俺は知っていた。
決まって毎年、聖夜の前後になると彼女は姿をあまり見せなくなる。
俺から理由を尋ねることはないし、イヴから語ることもない。
ただ、その頃に浮かべている心の奥に灯を灯すような笑みだ。
そして、イヴはゆっくりと口元を動かす。
「あなたは女の人のお友達、少ないですもんねぇ」
どこかしみじみとした、イヴの不意打ち気味の言葉のナイフが俺の硝子の心をズタズタに切り裂いた。
なんか、こう、……同情されていた。
そして、イヴは俺の掌から左の手を離すと自分の胸元にやり、ふんすと胸を張ってからのたまうのだ。
「現実をっ、見るべきだと思いますっ!」
見た目ファンタジー、脳内お花畑、職業サンタクロース(トナカイ付き)、に現実を突き付けられる稀有な、稀有すぎる状況は容易く俺の心を粉々に砕いた。
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