13:名無しNIPPER[saga]
2017/07/13(木) 00:12:33.49 ID:bX2YxMIQo
「……あなたが優しげな目でそれを眺めていると、彼女は目を覚まします」
「あなたの視線と目覚めた少女の視線が混じり合います」
「花が綻ぶような穏やかな笑みをあなたに向ける少女」
「『おはよう』、とどちらともなく交わされる言葉」
「ふたりの心のうちに暖かなものが満ちていきました、みたいな」
「……なんで、」
イヴはそこで言葉を切り、視線を彷徨わせる。
「こうならないのかなぁ……」
簀巻にされたままで流石にしんどいのか、額から一筋の汗の雫を溢れさせてイヴは呻く。
「えぇ……」
割りと言葉が、出なかった。
コイツの花が綻ぶような穏やかな笑みとか、完全に想像出来なかった。
俺が優しげな目を向ける前にコイツは既に我がパジャマの袖を齧っていた。
心に暖かなものが満ちる前に俺の腕は生温い涎に濡れていた。
別に俺は悪くないはずなのに、なぜか申し訳ない気持ちにまでなってくる。
いや、まさかとは思うが俺の感受性が乏しいだけで本当は俺が悪いのだろうか。
ふと、気づく。気づいてしまう。
咀嚼されていた袖口のボタンにイヴの歯型がくっきりと刻まれていた。
―――やっぱそれはねぇわ。
少し冷静になった。
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