3:名無しNIPPER[saga]
2017/07/01(土) 13:53:05.20 ID:hQxqBFn90
ザリッ…
ミケ 「悪いが、ランタンを貰えないか。後ろにいる彼らの分も」
「はい、もう用意してありますよ」
ミケ 「ありがとう。さあ、行くぞ…おい、誰かナナバを支えてやってくれ」
ナナバ 「うう…」ヒョコヒョコ
ゲルガー「ほら、俺につかまれ。そう……上手いな」
(あの人……足が片方ない)
ランタンはこの場所で増えすぎることも、減りすぎることもない。
サクッ
(サシャという人のレシピ通りにしたら、本当に美味しいパンが焼けた)モグモグ
(食べるだけじゃなくて、作るのも上手だったんだなあ)
(……あれ、どうして僕はそんなことを知っているんだろう?)
ここへ来る人はみんな、ランタンを持って海に出れば
ちゃんと行くべきところへ『辿りつける』ということを知っていたの。
モブリット「ありがとう。これは、ほんのお礼に」ギィッ
「花の種、ですか」
モブリット「あげるはずの人はもう……会えないから。大事に、してくれ」ニコッ
「……」
モブリット「じゃあ、元気で」ギーコ、ギーコ
オールを漕いで行く背中には、たいてい白と青の翼があった。
たまにつると薔薇だったり、角の生えた馬だったりしたけれど。
私はいつも、崖の上からそれを見送っていたの。
シャァァ…
(あ、モブリットさんのくれた花の種、芽が出てきた)
(どんな色の花が咲くんだろう。楽しみだなあ)
エルヴィン「どんよりした灰色の空、荒涼とした大地。私好みの風景だな」
エルヴィン「ああ、この右腕が気になるのかい?これは名誉の負傷というものさ。私は兵士だったからね」
エルヴィン「たくさんの者を後に残してきたが、きっと皆、私の辿った道を
踏みしめることすらできないだろう……さて、少年。そんな私に新たな道しるべをくれないか?」
「あ、はい。こちらへ……わあっ!?」ヒョイッ
エルヴィン「ははは、この方が早いだろう?」スタスタ
それからしばらく、荒野の向こうから誰も来ない日が続いて。
そして、ふっつりと人が来なくなった。
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