【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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49: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/07/21(金) 20:24:03.08 ID:CDK467qC0
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 茜は美城プロダクションの廊下を早歩きで進んでいた。
 学校の授業が終わり、いくつかの用事を終えてから到着したので、集合時刻に少し遅れてしまっている。

 茜の胸にはずっと不安が残ったままだった。結局、先輩プロデューサーからの連絡はないまま。
 今日の顔合わせも、比奈から時間と場所を教えてもらっている。

 それでも、顔合わせの場、プロデューサールームに行けば、大切な仲間たち、ユニットのメンバーがいる。だから、大丈夫。
 茜は自分にそう言い聞かせていた。

 廊下の角を曲がると、プロデューサールームの扉が見えた。
 茜は入館証のストラップを持った右手をぎゅっと握る。
 何度も訪れたプロデューサールーム。茜をスカウトしてくれた人は、いまはあの部屋には、いない。

 扉の前に立って、茜は胸に手を置いて、呼吸を整える。
 それから、右手をドアノブに伸ばした。
 そのときだった。

「ちょっと、それって、どういうこと!?」

 部屋の中から裕美の大きな声が聞こえてきた。
 茜はドアノブに手をかけたまま、その場に固まる。

「えーと、だから……」

 茜の知らない人の声が聞こえた。
 おそらく、この声の持ち主が先輩プロデューサーなのだろうと茜は想像する。
 茜はドアの内側に聞き耳を立てた。

「その日野茜って子は、プロダクションの所属アイドルのデータベースには登録されていないんだよ。美城プロダクションには、日野茜って名前のアイドルは、在籍していない」

「――っ!」

 茜は息を呑んだ。心臓を潰されたような気がした。呑んだ息が吐きだせない。
 身体が震えているような気がした。心のなかに残っていた不安が一気に広がって、頭から足の先まで真っ黒に覆いつくす。

 茜はドアノブを掴んでいた右手を、そろそろと離した。カチャ、とごく小さな音がする。
 その音を立ててしまったことに茜は怯えた。

 次の瞬間には、茜はその場から逃げ出していた。手から入館証のストラップが滑り落ちる。
 茜は入館証を落としたことに気づいたが、戻ることはしなかった。
 なにが起こっているのかわからなかった。
 茜はただただ恐怖にとらわれ、廊下の角を曲がり、階段を駆け下りて美城プロダクションを飛び出していた。



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