【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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◆Z5wk4/jklI
[saga]
2017/07/07(金) 20:54:44.06 ID:XFMgPNzd0
コントロールルームとレコーディングブースとを隔てるガラス窓の向こう、ブースの中にいる関裕美の表情は明らかに曇っていた。
となりにいるディレクターがこちらを気に掛けるような目線を送ってくる。
ブースの中の荒木比奈がさっき送ってきた視点も、裕美のことを伝えようと思ったからだろう。
さて、どうしたものか。
俺は小さく唸った。
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一時間程度前。
「それじゃ、今日はよろしくちゃーん、唯と気楽におしゃべりしてくれればいいからねー」
大槻唯はそう言ってひらひらと手を振った。
「よろしくおねがいします!」
茜たち五人の声が重なる。
今日は五人そろってのラジオ出演だった。
複合商業ビルのレコード店内に設置されたFM局のスタジオで、大槻唯がパーソナリティーを務めるラジオ番組でユニット活動の告知を行うことになっている。
収録前の最終打ち合わせを終えて、あとは放送開始時間を待つのみとなっていた。
茜と比奈は初めて訪れた収録スタジオに興味津々だ。
「私、初めてスタジオに入りました! こんなふうになってたんですね!」
「FM局、外からみたことはあっても、内側に入るのはさすがに経験ないっスね……見られながらの収録……緊張するっス」
比奈はスタジオと店舗を隔てる窓を眺めて言った。窓にはまだカーテンがかけられている。
収録スタジオには大きなデスクがあり、出演者はデスクを囲むようにして着席する。
店舗内からは窓を通してスタジオ収録の様子を観覧することができるようになっていた。
「公開収録、だったんだ……」
すこし不安そうな声をあげたのは関裕美だった。
「資料にはたしか、そう書いてあったと思います」
ほたるが返事をした。裕美を気遣うような目で見ている。
「そっか。見落としてたかな、私」
「あとでこの窓の向こう、お客さんでいっぱいになるよー、土曜のお昼だしねー」唯が言う。「とりま、打ち合わせはこんなもんっしょ。いーよね、ディレクターちゃん?」
唯が尋ねると、番組ディレクターが頷いて一歩前に出る。
「十分前にはスタジオ入ってください。みなさん初めてのかたもいるみたいで、緊張すると思いますけど、唯に任せとけば心配ありませんので、気楽におしゃべりする感じで楽しんでください」
「じゃ、控室でリラックスしててくれ」
俺は五人に退室を促す。五人はぞろぞろとスタジオから出て行った。
スタジオの扉が閉まり、俺はディレクターに向きなおる。
「今日はよろしくお願いします。大所帯でみなさん大変じゃないかと」
「そこは唯が捌くので心配ないと思います。デキるパーソナリティーですよ」
「へっへー、まかせてー!」
唯はにぱっと笑う。
大槻唯、美城プロダクションの注目株。
圧倒的なトークスキルで、どんなタイプの人間を相手にしても物おじせず、相手と自分をきっちり立たせて場をまとめることができる。
本人の軽い物言いと外見では想像しがたいほどの天性の才能を秘めたアイドルだ。
「心強いです」
俺は正直に言う。
ユニットとしての活動を開始しているとはいえ、茜と比奈はラジオ収録そのものが初めてだ。
実力のあるパーソナリティーに導かれて場数を踏めるなら願ってもない機会と言える。
「PA担当さんに……おそらく茜は興奮すると、さっきの機材チェックのときよりも声がかなりデカくなるんで、それだけ先に伝えさせてもらって」
「はは、日野さんのマイクだけちょっとレベル落としてるって言ってましたよ」
ディレクターはそう言ってコントロールルームでミキサー卓の席についているPA担当を見た。
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