16:1 ◆0NR3cF8wDM[saga]
2017/06/28(水) 21:46:41.00 ID:OXNr9JoL0
私にとって大きな事件が起こったのは、そんな頃のことでした。
合唱コンクール。
どこの学校でもあるのかな? クラスで歌を歌って、一番を決めるっていう行事。
誰かにとっては何でもないイベントで、誰かにとってはすごく楽しみなイベントで、誰かにとっては面倒なイベントで。
私、矢吹可奈にとっては、逃げ出したくなるくらいイヤなイベントでした。
私の学校は合唱コンクールに割と力を入れているみたいで、特にうちのクラスは合唱部や吹奏楽部などの所属の子が多かったこともあって、クラス全体でかなり真面目に練習計画を立てていました。
がんばろうね、という友達の言葉が、あの時は、本当に苦しかったんだ。
練習が始まりました。
音楽の時間だけじゃなく、朝や昼休み、放課後にも予定は組まれていました。ある程度は自由参加っていう形だったけどね。
最初は何とか誤魔化せていました。小さな声で歌ったり、もっと酷い時は口パクだったり。
だけど、練習を重ねると少しずつみんなに要求されるものが増えていって、個々人の指導にまで手が入ってしまうと。
もう、逃げられません。
ある日の昼休みの練習でした。
「ちゃんと歌って」
「真面目にやって」
「もう一回」
「音取れないの?」
「よく聞いて」
「……」
「……家で練習してきてね」
教えてくれる子はもちろん悪気なんて無かっただろうし、小学校の時のように笑ったりする子もいませんでした。
だけど、どんどん静かになって行く周りの様子が、私には、どうしようもなく辛かった。
ごめんなさい、って言うのが精一杯で、ずっと俯いて時間が過ぎるのを待っていました。
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