86: ◆Y096V6Llx.[saga]
2017/07/10(月) 00:40:01.58 ID:pGfppxzr0
港に船を係留させ、戦利品を運ばせる。
砂糖は結構貴重な資源なので、売るだけでそれなりの収入を得られる。
ラム酒は、船乗りにとっての水同然で、何より嗜好品としてうってつけ…らしい。
穀物は、長持ちするし、食料としては充分だ。
必要分だけ売却すると、資金はかなり潤沢になった。
消耗した弾の補充のために、倉庫へと向かう。
ずらりと並べられた砲弾を見ていく。
「んー…。臼砲の弾を撃った分だけ補給して…。おっ」
貴女の目に、一際細い砲弾が映る。
「これって何?」
「んぁ?狙撃用徹甲弾ってやつだ。そんなバカ弾、誰も買わないよ」
「バカ弾ねぇ…」
徹甲弾とは、円錐状の砲弾の中に、硬い金属を仕込んだ弾のことだ。
貫通力を持ち、堅牢な船にダメージを与えるには非常に有効な弾だ。
ちなみに、徹甲榴弾というのもあり、こちらはさらに、爆薬を内蔵させて内部から破壊するための弾である。
基となっているのは徹甲弾だが、爆薬を仕込んでいる都合上、衝撃に弱くなっている。
故に、この弾は普通の船を対象にしている場合が殆どだ。
今回目を付けた弾は狙撃用徹甲弾で、徹甲弾をさらに細くし、推進剤を追加することで、遠距離まで狙えるようにした弾だ。
細いため、空気の抵抗を受けることがなく、精密狙撃が可能だ。
もっとも、砲台で狙撃する意味など、ほぼ無いのだが。
「私には、そこらの弾よりよっぽど使い道があると思うんだけどね」
「誰も当てられっこないさ」
「私はできるけど」
「…言うじゃねぇか。女のくせに」
「性別は関係ないだろ。海に出たら、男も女もみんな海賊だ」
「それもそうか。悪かった」
「律儀だな。普通、自分が正しいとか言い張るのに」
「客に不満を持たせるのは二流ってもんだ。商売ってのは、ある意味信用の象徴だからな」
「商売が成り立つのには条件があってな。まずは…」
「あーあーパスパス。私には難しいことは理解できないんだ」
海賊になっても頭を使うとか冗談じゃない。
「とりあえず在庫分は全部買うよ。安いし」
「そりゃ助かる。在庫処分ができてこっちも大助かりだ」
「船まで配達よろしくな」
任せとけ、と返事を貰い、貴女は船へと戻る。
そろそろ船員たちの雑務も終わった頃だろう。
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