104: ◆Y096V6Llx.[saga]
2017/09/09(土) 01:45:46.58 ID:aHM3ZFvi0
「それで、どうするの?」
貴女は青年へと問う。青年は、顎に手を当てて思考に耽り、そして、答えを出した。
その答えは――
「丁重にお断りさせていただきます」
「Oh…」
明らかに気落ちした貴女だが、挫けずに色々な人に声を掛ける。が、誰も彼もが「No」と返す。
「マスター水ー…!」
貴女はカウンターに突っ伏して、頭を抱える。その後、頭の傍に丁寧に置かれた冷水を一気に飲み、思考を纏める。
どうして、誰も加入しようとしないのか。
頭の悪い貴女だが、なぜ断られるのか、その理由が何なのか、それくらいは考えることができた。
当たり前のことではあるが、傍目からみれば、貴女は年端もいかない少女が率いる海賊団なのだ。
二つ返事で加入を決める者など、よっぽどの物好きしかいないだろう。
ロリコンとかロリコンとかロリコンとか。
その上、未だに名のある海賊団ではなく、どこかの有名な海賊団の傘下、というわけでもない。
口では強いだの無敵だの言っても、信憑性が低すぎる。
普通の人なら、そんな海賊団が無名なわけがない、と考えるだろう。
実際、この酒場にいる人らは、海賊のことに興味があり、海賊という存在が身近な人たちではあるが、
目の前の少女が強い、と考える者は誰一人としていなかった。
「ドレッドノートの運用が大変だから人を増やしたいのに、増やすためには名を上げないといけないのかぁ…」
こういうのをジレンマっていうのかな、と口にする。
チラリ、と辺りを見渡すと、船員は楽しそうにお酒を飲み、談笑をしている。
「簡単にできると思ってたけど、実際にやってそう上手くいくとは限らない、か」
エリスが昔言っていたことを思い出す。
「常に事が上手く運ぶわけじゃない、最悪の状況を常にイメージしなさい」と。
「ホント、その通りだよなぁ…。反省しなきゃ…」
見通しが甘かった自分を恨めしく思い、頭に軽くデコピンをした。
心が沈んでいく貴女とは裏腹に、ジブラルタルの人々の心ははどんどん明るくなっていく。
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