8: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/06/22(木) 21:38:57.74 ID:ys67cGWM0
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水のはねる音が、少し離れたこの部屋まで届いてくる。
俺はベッドに腰掛けながら、缶ビールをぼんやりと見ていた。さっき先輩がコンビニに吐きにいったついでに、自分用に買った物だ。あの人意地でもダッシュボード開けないけど一回ちゃんと怒った方がいいのかな?
まあそんなことより。
この缶ビールに口をつけると、俺は飲酒運転でもしない限り帰る手段を失うことになる。踏みとどまれる最後のチャンス。これを飲まずに、彼女がシャワーを浴びているうちにさっさと帰るという選択肢もある。人として最低だが、プロデューサーとしてはそうしてもいいかもしれない。
「…」
俺とはぁとさんは、アイドルとプロデューサーの関係。そんな俺が担当の部屋で一夜を明かしましたなんて、世間が知ったらどうなるか。
はぁとさんは間違いなく人生を棒に振ることになる。ファンを裏切ったアイドルとして、後ろ指を指され続けることになってしまう。今ならまだ大丈夫だ、引き返せると頭の中で警報が鳴り響く。
そうやって、断る理由をいくつも探しては並べ立てる。ダメだダメだと職業倫理が叫ぶ。理性がやめろと訴える。
けど俺は、それらを一蹴するかのように、俺は缶を開け、そのまま一気に飲み干した。
勝てなかった。
「…ぬるい」
ビールの味は、分からない。
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