10: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/06/22(木) 21:40:10.33 ID:Tu9HjCgo0
本格的に惚れたのは、初ライブの後。楽屋にねぎらいの言葉をかけに行ったときに目に入った彼女の涙。
『な、泣いてねーし☆』
こっちが何かをいうより先にはぁとさんは否定してきた。
『いや泣いてるじゃないですか』
『泣いてないって!アイドルはいつも笑顔だろ☆』
この人が、自分の弱いところを見せるのが苦手な人だと言うことは知っていた。でも俺は、それがどうしてか嫌だった。
今にして思えば、頼られたかったんだと思う。一人のプロデューサーとして、しゅがーはぁとの支えになりたかったんだろう。
『…アイドルでも、嬉しいときは泣いていいと思いますよ』
『…』
初めてのライブは大成功で、舞台に立ってない俺でも涙を流したくなったほどだ。当の本人は、俺以上にその気持ちが強いだろう。
『…胸貸せ』
それだけ言うと、はぁとさんは俺の胸に飛び込んできた。頭を埋め、スーツを歓喜の涙で濡らす。
『よかっ…よかった…成功して…本当に…!』
それに釣られて、俺も涙を流しそうになるが、ぐっとこらえ、子供のように泣きじゃくるはぁとさんの背中をさする。
『…お疲れまでした、最高のライブでした』
『うんっ…うんっ…!』
手のひらから、はぁとさんの熱が伝わってくる。
『…ありがとう、プロデューサー』
泣き止んだはぁとさんが、まだ少し潤んでいる瞳と、とてもすっきりとした笑顔で俺の顔を上目遣いでのぞき込む。
反則だろ、と思った。この笑顔と涙に俺はノックアウトされた。男ってのは、女の涙と笑顔に弱い。こんなちょっとしたことで恋に落ちるなんて、男ってのはやっぱり単純だな。
衝動的に抱き締めたくなったのを、理性で押さえ込む。
『…どうした?』
『…何でも無いです』
このとき以降、俺はしゅがーはぁとに、佐藤心に惹かれていったんだ。
「…思春期かよ」
自嘲気味に呟く。このたった一回の出来事で恋に落ちるなんて。でもこのとき以降、加速度的にはぁとさんに惚れていって、好きになって、もっと活躍させてあげたくなったのも事実。
いつか思いを伝えようと思っていた。そのときのための言葉も用意していた。でも俺はプロデューサーだ。この思いは、決して許されないものだ。恋い焦がれれば恋い焦がれるほどに、その思いが俺を締め付ける。
「…」
さっきのキスの感触を思い出すように、唇に触れる。時間にして3秒ほどだったが、俺には永遠に感じられた。
「…柔らかったな」
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