191:名無しNIPPER[saga]
2017/06/20(火) 03:24:08.99 ID:smyUCZOA0
『『……千歌さん』』
声が聞こえる。
きらきらと穏やかに乱反射する、宝石のような声が。
『ずっと、思っていました。もしも、ルビィに優しくできていたら、どうなっていたのだろうかと』
『つらくあたらなければよかったのに、ルビィの趣味を咎めなければよかったのにと』
『ですが、あの時期。あの苦しかった時期は、わたくしのルビィへの甘えであり、同時にそれまで本気であったことの証左でもありました』
『そして、甘えるわたくしを支えてくれたルビィへの感謝を、わたくしは忘れたくはありません』
『ずっと思ってたんだ。もしあの時、お姉ちゃんを助けられていたら、もっとよかったんじゃないかって』
『家事とか、生徒会とか、家のこととか、もっとお姉ちゃんの負担を減らせたんじゃないかって』
『でも、お姉ちゃんが怒ったり、泣いたり、そういう弱音を吐くのは、黒澤家の中で、いつもルビィの隣だったんだ』
『ルビィも、助けになれていたんじゃないのかな。ちょっとくらい、特別な場所だったって、うぬぼれてもいいんじゃないかなって、思うんだ』
2人の影が、混ざって溶けた。
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