7: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 19:55:10.89 ID:5UUNa7QZ0
私はあーちゃんの控え室へ向かう。中を覗き込むと、あーちゃんがなにかを読んでいた。
台本ではない。雑誌のようだ。
振り返ったあーちゃんは、嬉しそうに微笑んだ。
「未央ちゃん、お疲れさま」
やっぱり実物が一番可愛い。
「あーちゃん。今日はよろしくね」
「うん、こちらこそ。未央ちゃんがゲストに来るの、楽しみにしてたんだ」
「私もだよー」
あーちゃんとは、もう一人、日野茜こと茜ちんを加えた三人で『ポジティブパッション』というユニットで活動している。
そうでなくてもプライベートで会うことは多いが、こうして個人番組にゲストで来るのは、いつもと違うわくわくがあった。
私はあーちゃんが閉じた雑誌の表紙に目を落とす。二十代向けのファッション雑誌のようだ。
あーちゃんがふだん読むような雑誌ではなかった。
「ふうん。『貴方の「カッコいい」を見つけよう』ねー」
表紙に書かれていた煽り文句を声に出して読む。
「あーちゃんそう言うの目指してたり?」
「えっ? ああこれ。そんなんじゃないって」
あーちゃんは雑誌を手に取るとぱらぱらとページをめくった。中央付近のページを私に見せるように開く。
私は眼を丸くした。
そこには、ピアノに背を預けて立っている一人の女性が写っていた。
長くて滑らかな髪の毛に、整った顔立ち。何気ないように首をかしげている立ち姿は自然であるのに、ピアノに乗せた指先一つとってもキレイに決まっていた。
そう感じるのは、カメラマンの腕だけが良いからだけではないだろう。
彼女自身の努力の賜物だ。
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