2: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 19:47:48.07 ID:5UUNa7QZ0
心地よい汗は拭うのすら恋しかったけど、乙女がいつまでも汗だくなのはよろしくない。
スタッフさんから受け取ったタオルで、額をつたっていた汗をふきとった。
お礼を言って、タオルをスタッフさんに返す。
「お疲れ様。よかったですよ」
女性スタッフさんの言葉に、私は自然と笑みが零れた。
「えへへ、ありがとうございます」
気分はすっきり。頬にはまだ熱気が残っていた。
甘い熱気だ。アイドルにならなければ、きっと一生感じられなかった心に染みる喜び。
顔を上に向け、私は目をつぶってその余韻に浸る。頬が緩んでしまう。
透き通るようなエメラルド色の海に浮かんで、まばゆい太陽を全身に浴びたって、きっとこの気持ち良さには敵わない。
「みーおーちゃん」
耳をくすぐった声に、私は目を開けた。
島村卯月。しまむーだ。彼女にしか咲かせられない満開の笑顔が私の顔を覗き込んでいた。
私と一緒に舞台に立っていたから、顔には火照りと疲労があったけど、しまむーの輝きは色あせるどころか、何倍にも輝いていた。
「お疲れ様です。今日もとっても良かったですよ」
「いやいや、しまむーだって。流石ですなー、登場直後のドジっ子アピールで、お客さんの心をがっつり掴むとは
桃色だったしまむーの頬が、真っ赤なリンゴ色に染まり変わった。
名乗り出た直後、しまむーは舞台上で盛大につまずいたのだ。今のように顔を赤くしたしまむーにお客さんは大受けだった。
「先に言って欲しかったなー。そしたら、私も一緒に可愛くこけられたのにー」
「あれはワザとじゃなくてですね。その、えっと……」
「未央。卯月を困らせないで」
わたわたするしまむーの後ろから、黒いストレートの長髪の少女が言った。
汗を拭きながら飲み物を飲んでいるだけなのに。こう、凄く様になっている。
渋谷凛こと、しぶりんだ。
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