【ミリマス】ライアー・ルージュ
1- 20
2: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:08:35.13 ID:yFIcZ1s10
 ――あの人の視線を、思い出せない。
 
 学校がお休みの土曜日、私は決まって早めに事務所に行く。朝早いせいか、町も眠ったようにしんとしている。我ながら早く出過ぎたかな、と思わないでもなかったけれど……それでも、早めに行くことをやめようとは思わなかった。
「途中で引き返すのも面倒だし」
 そんな風に自分に言い訳しつつ、先を急ぐ。言い訳するような事を自覚すると、心なしか足が速くなった気がした。
しばらく町を行くと、ようやくお目当ての場所に着く。765プロ事務所。劇場と併設されたとはいえ、まだまだ小さいと思うのだが……これは、私たちの頑張りが足りないせいだろうか。少しばかり申し訳ない気持ちを感じつつ、その中に入った。
 いつもの喧騒が嘘のような静けさ。まだ明かりも全部ついているわけじゃない通路を進む。カツンと音を立てる靴が、何故かシンデレラが履いているガラスの靴のように思えた――この年にもなって、絵本の中のお姫様に憧れてるのって、おかしいのかな。
 呆れるような自分の思考にため息を漏らしつつ、目当ての部屋の前までやってきた。
 ――胸が苦しい。何故だろう。
 鼓動を抑えつけるために、一度大きく深呼吸して、ノックする。
「失礼します」
 返事を待たないままに、私は静かにドアを開けた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
49Res/35.97 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice